年上幼馴染の一途な執着愛
「日向……?」


漏れ出た声に、日向はパッとこちらを見て目を見開く。


「夕姫……」


そして、慌てて和歌さんから手を離し私の方へ走ってきた。


「夕姫、いつから……」

「……」

「夕姫?」


私の肩に手を置こうとした日向から、一歩後ろに下がる。


「ご、めん。邪魔して。……私、先戻るね……」

「夕姫!」


日向が止める声を振り切り、私は足早にその場を立ち去る。
すれ違う時も和歌さんの顔を見られなくて、下を向いたまま逃げるように会場に戻った。


「トイレ混んでたの?」

「……うん。でも間に合って良かった」


お母さんに返事をして席に座る。
そのすぐ後に私を追いかけるかのように日向が急いで戻ってきたようだけれど、タイミング良く新郎新婦の入場のために照明が暗くなったおかげで話しかけてはこなかった。
今話しかけられても、まともに返事をできる自信がなかった。
自分の中で渦巻くドロドロとした黒い気持ち。
それが、嫉妬だということには自分でも気が付いていた。
お兄ちゃんと美春さんがキャンドルサービスにやってきてくれた時も、


「ユウ、楽しんでるか?」


そう声をかけてくれたお兄ちゃんに無理矢理笑顔を作って頷くことしかできなかった。
こんなの、お兄ちゃんにも美春さんにも失礼だ。

今は日向と和歌さんのことは気にしないで、この披露宴を楽しむことだけ考えよう。
そう頭の中で切り替えて、日向のことは視界に入らないようにして披露宴に集中した。
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