年上幼馴染の一途な執着愛
「夕姫、はよ」
不意に日向に話しかけられて、私は肩を跳ねさせる。
「……おはよ」
自然に、自然に。そう思えば思うほど、うまく声が出せずにかなり不自然になってしまった。
そんな私に日向が気づかないはずもなく。
「……もしかして、眠れなかった?」
と小声で聞いてきた。
「なっ……」
思わずおたまを持って振り向いた私に、
「ほら振り回したら危ないって」
と驚いたように私からおたまを取り上げる。
「……今のは日向が悪い」
「ごめんごめん。……実は俺も眠れなかったからさ。ついね」
「え……」
「ん、うま!」
私が目を見開いている間に、お雑煮を味見した日向が嬉しそうに私にも小皿を差し出してくる。
「ほら、うまいぞ」
そう言って私の口元に小皿を持ってきて、そのまま飲ませてくれる。
「どう?」
「……おいしい」
「だろ?」
「ふふっ、なんで日向がそんなドヤ顔してるのさ」
うちのお母さんが作ったお雑煮なのに、どうして日向が得意気なのか。
そう思ったらなんだか気にしてたのが馬鹿馬鹿しくなってきて、小さく笑った。
「やっと笑ったな」
「え?」
「夕姫は笑ってた方が可愛いよ」
日向はそう言って私を見て微笑むと、
「顔洗ってくるー」
と洗面所に向かっていく。
やっと笑ったって……私、昨日も笑ってたと思うんだけど……。
それに可愛いって、今までそんなこと言ったことないくせに。
昨日のキスといい、一体どういう風の吹き回しなの……?
そんな疑問はあれど、それを直接本人に聞くことなんてできやしない。
頭の中がぐるぐるとしながらも、お雑煮を準備しないととお椀に入れようとした時。
「あっ!っつ……」
動揺していたからか、手が滑ってお椀から汁がこぼれて私の手に思い切りかかってしまった。
反射的にお椀も落としてしまい、床にまで汁が広がってしまう。