年上幼馴染の一途な執着愛
「もしかして、誕生日忘れてた?」

「……忘れてたわけじゃないけど、忙しくて頭からちょっと抜けてたかも」

「ははっ、そんなことだろうと思ったよ」


一気に目が覚めた私は、身体を起こして日向がテーブルに置いたいちごタルトを見つめる。


「ケーキ買ってくれてたなんて知らなかった」

「夕姫が喜んでくれるかなと思って。だけどこの時間にホールケーキは重いし、そもそも夕姫は生クリームあんまり得意じゃないだろ? だから夕姫の好きなタルトにした。小さくてごめんな」

「……ううん。私、いちごタルトが一番好きだから嬉しい」


つやつやしたケーキに目を輝かせる私を見て、日向はホッとしたように優しく笑う。
生クリームが得意じゃないことを覚えてくれていたのも、私が好きなケーキを覚えてくれていたのも、こうやって一番にお祝いしてくれるのも、たまらなく嬉しい。
わざわざ私の誕生日に合わせて用意してくれたその優しさも、本当に嬉しくて幸せだ。


「ありがとう日向。すごく嬉しい」

「今食べれそう?」

「うん。食べる。日向の分は? 一緒に食べよ」

「ん。今持ってくる」


冷蔵庫の中から日向の分のタルトも出して、一緒に味わって食べる。
日向が用意してくれて、一緒に食べているからだろうか。
月並みな表現だけど、今までの人生の中で一番美味しいと思った。
甘酸っぱいいちごを頬張っていると、日向が


「ほら、これもやる」


ともう一粒私の口元に運んでくる。
それをぱくりと食べると幸せの味がした。
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