年上幼馴染の一途な執着愛
「どうしたの?」


見上げると、なんだか言いづらそうな、照れたような表情で私を見つめていて。


「……まだ、時間ある?」

「え? うん、あるけど……」

「どうせ出てきたし。まだ帰るには早いし。……ちょっと散歩しねぇ? つーか、そうしよ」


有無を言わさない言葉と共に、日向は私の腕を離す代わりに手を掴む。


「日向?」

「はぐれたら困るだろ」


そんなに人も多くないからはぐれないよ。
なんて言葉は、日向の真っ赤に染まった顔を見てしまったら、言えるわけもなかった。


お正月だからだろうか。久しぶりの地元だからだろうか。
いつもと違って空気が澄んでいるように感じるのはどうしてだろう。
私は日向に手を引かれたまま甘酒を貰いに行き、境内の中を散歩する。


「おいしいね」

「あぁ。寒いから身に沁みるな」


手は繋がれたままで、周りの空気は冷たいのに手だけが妙に温かい。
暑いくらいなのに手を離せないのは多分、日向が解けないようにギュッと握っているから。
特別何かを話すわけではない。昨日のことで気まずい気持ちが少なからずあるのも、変わらない。
だけど、この穏やかな時間はすごく心が和らぐ。


「ん?なんだ?」

「ううん。なんでもない」

「変なやつだな」


やっぱり私、日向といる時間、好きだなあ。



甘酒を飲み終わり、境内を抜けるとすぐに公園がある。
その中には大きな雪の塊が見えた。
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