年上幼馴染の一途な執着愛
「……どうしたの? 何かあった?」

「いや。ただ俺がこうしたかっただけ」

「なにそれ、変なの」


目は冷たいのに、身体は包み込まれて温かい。
それが、心地よい。


「……でも不思議。あったかくて、懐かしくて、落ち着く」

「……」

「よくよく考えたら、私が落ち込んでる時はいっつもこうやって抱きしめてくれたよね」


日向は何かあると必ず不器用に抱きしめてくれる。

温かくて、優しくて。

日向の名前のように、ひなたぼっこしてるみたいに落ち着く。そんな陽だまりのような優しさに、いつのまにか縋ってしまうんだ。


「だって、お前が寂しそうな顔するから」

「……そんな顔してた?」


自分じゃそんなこと気付かない。


「あぁ。今も。すっげぇ寂しそう。さっきはもう大丈夫って言ってたけど、本当は全然大丈夫じゃないだろ」

「そんなこと……」

「違うって言えるか? 俺の前では強がんな。全部わかってるから」

「日向……」


どうしてだろう。日向には全部見透かされている。
私が弱っていることも、私が全然大丈夫じゃないことも。
今も本当は寂しくて仕方がないことも、こうやって抱きしめてもらっているのがたまらなく嬉しいことも。

全部、見透かされてる。


「そんなクズな男のことなんて、俺が忘れさせてやるよ」

「え?」

「俺のこと、利用していいから。だから早くそんな男忘れちまえ。……忘れてくれよ」


付け加えられた、想い。

肩に置かれた額が、震えていた。
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