年上幼馴染の一途な執着愛
次に目を覚ました時には、日向も起きていた。


「はよ」

「……おはよ」

「よく寝てたな」

「一回起きたけど、日向が離してくれなかったから……」

「それはごめん。夕姫に逃げられそうになる夢見てたからそれかも」

「ははっ、なにそれ」


寝起きの甘い声にどきりとしながらも、普段通りの雰囲気に笑う。
そう思っていたのに、


「夕姫」


急に呼ばれて顔を上げると、そっと唇が重なった。


「もう夕方だ。夕姫ん家帰ろ」

「うん……」


どんな顔で日向を見ればいいのかわからない。


「俺先に部屋出てるから、準備できたらおりてきて」


私が頷くより前に、日向はベッドの下に落ちていた服を取って着ていく。
そんな姿から目を逸らしているうちに、部屋のドアが閉まる音がした。


「……なんで日向はいつも通りなのよ……」


意識してるのは私だけなのかと思うとなんだかムカつく。

ひとまず私も散らばった服を急いで着て、鞄に入っていた鏡で身なりを確認してから部屋を出た。


「準備できた?」

「うん……」

「じゃ帰るか」


そう言った日向は、私にペットボトルのお茶を渡してくる。

確かに喉が渇いたから、ありがたい。
受け取ってキャップを開けて、ごくりと流し込んだ。


帰り道、雪は止んでいてパキッとした空気が今の火照った頭にはちょうど良かった。
とは言え寒いことには変わらず、風が吹くたびに震えてしまう。
いつもなら他愛無い話をするのだけれど、今は何を話していいのかがわからず、日向の実家を出てからはずっと黙って歩いていた。

このまま家に着いたら、気まずくなっちゃうのかな……。

そう思っていると、


「……少しは忘れられた?」


と日向が私の頭に手を乗せた。
< 33 / 154 >

この作品をシェア

pagetop