年上幼馴染の一途な執着愛
*****


日向との約束の日は、忙しなく過ごしているうちにあっという間にやってきた。


"待ち合わせは十九時ごろで大丈夫か?"


そんなメッセージが朝から来ていて笑ってしまう。
それに承諾の返事をして、いつも通り出勤した。


「秋野さんおはよ」

「真山さん、おはようございます」

「なんか機嫌良いね」

「え、そうですか?」

「うん。いつもより雰囲気が明るい気がする。さてはいいことあったなー?」

「いや別にそういうわけじゃないですよ。ただ、今日はちょっと予定があるのでそれが楽しみではあります」

「珍しいね、あの彼氏さん?」

「あれ、言ってませんでした? 彼とは年末に別れちゃったんです」

「え!? そうだったの!?」

「はい。いろいろありまして」


出勤早々、エントランスで同じ総務部の先輩である真山さんと会い、一緒にオフィスに入る。

エレベーターに向かいつつ信明くんと別れたことを告げると、目を見開いて驚いた後に


「そっかあ……。でもこんなこと言ったら秋野さんは怒るかもしれないけど、ちょっと安心した」


と笑った。


「もー、真山さんまでそんなこと言う」

「他にも誰かに言われたの? そりゃそうだよ。その元彼さん、束縛すごかったじゃん」

「すごかったんですかね……」

「すごかったと思うよ。彼が嫌がるからって会社の飲み会も全部断ってたでしょ。私、結構寂しかったんだからね?」

「そういえばそうですね……すみません。いつのまにかそれが当たり前になってて、あんまり気にしてなかったかもしれないです」

「すっかり洗脳されてた感じだったもんね」


真山さんにも言われてしまうほど、信明くんの束縛はすごかったようだ。
言われてみれば会社の飲み会にもここ数年行ってないし、友達とも連絡は取るけど実際に会っていない。
ランチで社内の人たちと近所に出かけるくらいしかそもそも外に出ていなくて、友達の結婚式に行くのも信明くんに嫌な顔されたっけ……。

あれ、もしかして、私相当ヤバい人と付き合ってた?

自分を客観的に見て初めて、真山さんの言うとおり洗脳されていたのかもしれないと気がついた。
日向もお兄ちゃんも、私が信明くんと別れたことに喜んでくれているのが複雑な気がしていたけれど、当たり前のことだったのかもしれない。
それだけ心配をかけていたのかと思うと申し訳ない気持ちにもなる。
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