年上幼馴染の一途な執着愛
「でも……その人と確か結婚の話も出てたんじゃなかった? なんで別れたの?」

「それが……いや、あんまり大きな声では言えないので……今日のランチの時でもいいですか?」

「……だいぶやばい話ってことね? わかった。じゃあ後で聞かせて。個室のお店探しとく」

「ありがとうございます……」


真山さんの気遣いに感謝しながら、エレベーターに乗った。


「秋野さん、おはよう」


総務部に入るとすぐに、営業部所属の先輩、浅井さんが声をかけてきた。
営業部と総務部は隣だけど、朝からこちらにいるのは珍しい。


「浅井さん、おはようございます。総務部にご用でしたか?」

「いや、この間商談についてきてもらっただろ? そのお礼渡しに来たんだ」

「え!? そんな、私はただついていっただけみたいなものですし、お礼なんて受け取れませんよ」

「そんなこと言わずに。データもまとめてもらってかなり助かったんだ。だからほら、受け取って」


そう言って差し出された小さな箱。
近所でおいしいと評判のパティスリーにある焼き菓子セットだ。
確かに数日前に浅井さんに頼まれて商談についていった。いつも一緒に行ってる営業事務の女性社員が休みだったから、私が借り出されたのだけど。
特に何をしたわけでもないし、ただデータをまとめて浅井さんの補佐的役割をしただけだ。
こんなお礼をいただけるようなこと、した覚えはないのだけれど。


「可愛い! ……こんな素敵なもの、いただいちゃって本当にいいんですか?」


ここで無理に断ったら、逆に浅井さんに気を遣わせてしまうかもしれない。ここはありがたく気持ちを受け取っておくのが良いだろうか。
そう思っておずおずと受け取ると、浅井さんは嬉しそうに笑ってくれた。


「もちろん。その代わりまたお願いするかもしれないから、その時は頼むよ」

「はい。ありがとうございます」


会釈をすると、浅井さんは颯爽と営業部の方へ戻っていく。
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