年上幼馴染の一途な執着愛
「私の家から近いところだ」

「まじ? 良かった」

「あ、でも私も今引っ越し考えてるから、もしかしたら遠くなるかもしれないけど……」

「引っ越し?」


日向に真山さんと話したことを伝えると、


「確かにそうだな、何かあってからじゃ遅いし、引っ越しするのは良いと思う」


と頷く。


「うん。だから明日不動産屋さん行こうかなって思ってたんだ」

「そうか。じゃあ明日、一緒に行くか?」

「え?」

「俺、帰りの新幹線夕方なんだ。午前中は引っ越しのために新しい家具を見に行こうと思ってたからそのついでに。どう?」

「でも、いいの?」


その提案はありがたいけれど、日向の貴重な時間が無くなってしまう。


「俺がそうしたいんだよ。その代わり、俺の家具選びにも付き合って」

「うん、いいけど……」


むしろ私も家具を選びたいから、断る理由なんて無い。


「ん。じゃあ決まり。明日の朝また待ち合わせしよう」

「わかった」


こうして、明日も一緒に出かけることが決まった。


そのままスマホで物件を調べつつ食事も終わり、健全に家に帰ることになった私たち。
断ったのに、日向は私を家まで送ると言ってきかなかった。
そのため日向と一緒に電車に乗り、最寄駅で降りて再び歩く。


「日向は今日、どこに泊まるの? 新居?」

「新居の引渡しは昼休みの間に済ましてきたんだけど、家具無いからまだ寝られなくて。今日は会社の近くにあるホテルに泊まるよ」

「それってここから遠いんじゃない? なおさら申し訳ないんだけど」

「気にすんなって。ほら、行くぞ」


さらっと私の手を取る日向は、私の顔を見ずにそのまま進んでいく。
繋がれた手に驚いて何も言えなくなっているうちに自宅アパートが見えてきた。


「ここか?」

「うん。送ってくれてありがとう」

「ん。じゃあまた明日な。あとで時間連絡する」

「わかった。気を付けてね」

「あぁ、ありがとう。もう遅いから早く家入れよ。おやすみ」

「うん。おやすみ」


日向が見えなくなるまで手を振ろうと思ったけれど、早く入れと言われてしまいアパートの玄関に入る。
自室に入り窓から外を覗くと、遠くを歩いている日向の後ろ姿が見えた。



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