年上幼馴染の一途な執着愛
「それが、秋野さんは今日先約があるんだって」

「そっかー、残念。じゃあまた今度誘うよ」

「すみません。ありがとうございます」

「気にしないで」


浅井さんは颯爽と私たちの横を通り過ぎ、営業部に入っていく。
今日も爽やかなその後ろ姿を見ながら、私たちも仕事を開始した。
いつもより急いで仕事をこなしていたからか、定時になるまでに「これもお願い!」とどんどん仕事を振られてしまい、デスクには資料の山が出来上がっていく。

断ればいいんだろうけれど、忙しいのはお互い様。

現に、私より他の人たちの方が仕事量は明らかに多そう。
そう思うと頼まれれば引き受けてしまうこんな自分の性格が本当に嫌いだ。
急ぎたい時に限って来客も多いし電話も鳴る。
営業部の事務処理を振られたり、後輩がミスしてしまいその後処理とフォローに追われたり。
結局全部終わる前に定時が来てしまい、残業が確定。


"ごめん、残業になる。先お店入ってて"


そう日向に連絡すると、すぐに


"いや、予約してるわけじゃないからいいよ。会社まで迎えに行く。終わったら連絡ちょうだい"


と返事が来た。

それは申し訳ないと断りを入れようとした時に、


「秋野さん!すみません確認お願いします!」


半泣きの後輩に呼ばれてしまい、咄嗟に


"わかった。ありがとう"


と返事を送って席を立つ。
あまり日向を待たせちゃいけない。急がないと。
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