年上幼馴染の一途な執着愛
「どうした? フラフラして」

「いえ、ちょっと熱があって早退するところで……」

「え、熱!? 大丈夫?」

「はい、大丈夫です……」


浅井さんにお礼を言ってその場を立ち去ろうとするものの、また熱が上がってきたのか足がふらつく。
やっぱり真山さんの言うとおりタクシーで帰るべきだったか。
今からでも電話して呼んだ方がいいかな……。
そう思っていると、


「今車回してくるから、ちょっと待ってて」


浅井さんがそう言ってその場を離れた。
今、浅井さんなんて言った?
車回す?いや、どうして?
考えている間に、社用車が一台横付けされた。


「秋野さん、乗って」


運転席から降りてきた浅井さんが、私を支えながら助手席に乗せてくれる。


「浅井さん、なんで……」

「俺、今から外回り行く予定だったんだ。ロビーのトイレ寄ってから行こうと思ったら秋野さんがぶっ倒れそうになってたから。外回り行くついでに家まで送るよ」

「でも、そんなの悪いです」

「そんなふらふらな状態で何言ってんだよ。目の前で熱で倒れそうになってる子一人で帰すとかどう考えてもありえないでしょ」


浅井さんはそう笑って、私にシートベルトをつけてくれる。
その足で運転席に戻った。


「住所だけ聞いてもいい?」

「あ、はい……」


アパートの住所を伝えると、浅井さんはナビにそれを打ち込んですぐに発進した。


「秋野さん、大丈夫?」

「はい……」


車に揺られてると、いつもは酔わないのに熱のせいなのかなんだか気持ち悪くなってくる。
窓を開けてくれた浅井さんにお礼を言いながら、外の空気を吸うべく深呼吸を繰り返した。
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