年上幼馴染の一途な執着愛
「……日向?」

「夕姫。こんな時間に来てごめん」

「ううん。大丈夫だよ」


後ろ手に玄関の鍵をかけた日向は、私を抱きしめたまま離そうとしない。
それどころか、


「キスされたのどっち?」


と聞かれて、指差すと


「……消毒させて」


上書きするように何度もそこにキスをされた。
浅井さんにされた時とは違う、熱を持った頬。


「日向……」

「ん、もうちょっとだけ」


だけど、いつまでも玄関でこうしてるわけにもいかない。


「……日向、ここじゃ寒いから、とりあえず中入って?」


背中を軽く叩くと少し身体を離してくれたため、手を引いて中に通す。
ソファに座らせてお茶を出そうとするけれど、日向はそんなのお構いなしにもう一度私を抱きしめた。


「日向、お茶出すから……」

「いい、大丈夫」

「でも」

「大丈夫だから、ここにいて」


今にも消え入りそうな声に、私は「わかった」と頷いた。


「……俺、情けねぇな」

「ん?」

「夕姫が告られたって聞いて、キスされたって聞いて、まじで焦ってる」

「日向……」
「多分、夕姫以上に今めちゃくちゃ動揺してる。夕姫がまた手の届かないところに行っちゃうんじゃないかって。俺以外の男のところに行くのかって考えたら……怖いんだ。怖くてたまんない。俺が口出しできることじゃないのに。俺だって無理矢理夕姫に手出して、何も人のこと言えねぇのに。どうするかは夕姫が決めることなのに。……大の大人が情けねぇよな」


小さく笑った日向は、私の肩に顔を埋める。
私はそんな日向がすごく愛おしくなり、背中に手を回してから右手でぺたんこになった髪の毛をゆっくりと撫でた。
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