可愛げがないと捨てられた天才魔導具師は隣国でのんびり気ままな工房生活を送ることにしました!~念願の第二の人生、思う存分ものづくりライフ!~

 濃いメイクを施し、疲れ切った顔を隠した。魔導具作業のために短く切った爪につけ爪をつけ、指先の汚れと傷を隠す。

 そして、ヒールのないぺたんこの靴を履いた。ヒールの高い靴は、婚約者のレモラ・デ・ジューレが嫌がるからだ。

 彼はルシアと同じくらいの背の高さのため、彼女より自分の背が低く見えることをことのほか嫌っていた。 

(自分の体面を守るために、私に文句をつけるなんて、本当にくだらない)

 ルシアとレモラは、幼い頃に決められた政略的な婚約者同士だった。

 レモラはルシアの家門ファクト子爵家が忠誠を誓う、ジューレ侯爵家の跡継ぎだ。

(出会ったときはポッチャリとして、可愛らしい泣き虫だったのに)

 ふたりが出会った頃、レモラはコロコロとしたイジメられっ子だった。

 のんびりとして、気弱だった彼は、侯爵の厳しい躾に泣いてばかりいた。ルシアはそんな彼が気の毒で、一人前の人間になれるよう手を貸し、尻拭いをし続けてきたのだ。

 ルシアと、彼女が作った魔導具のおかげでレモラは一廉(ひとかど)の人になりつつある。
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