可愛げがないと捨てられた天才魔導具師は隣国でのんびり気ままな工房生活を送ることにしました!~念願の第二の人生、思う存分ものづくりライフ!~
「これくらいなんでもないさ。ブナの木は良いアイデアが浮かぶといわれているよ。願いを書くとかなうのだそうだ。この店がルシアの希望の光になったらいい」
ファクト子爵はそう言うと、泣き出しそうな顔で娘をギュッと抱きしめた。
「……困ったことがあったら連絡するんだよ」
「うん」
「私はいろいろなことを片付けなければいけないから、一度ヒベルヌス王国へ戻るけれど、どこにいても私はルシアの味方だからね」
「うん。私もお父様の味方よ」
ふたりはギュッと互いに抱きしめ合った。
そうして、ファクト子爵はヒベルヌス王国に戻っていった。
ルシアは父の背中を見送ると、キュッと目元を手の甲でこすり顔を上げた。