可愛げがないと捨てられた天才魔導具師は隣国でのんびり気ままな工房生活を送ることにしました!~念願の第二の人生、思う存分ものづくりライフ!~

 精霊の宿るペンダントは、母の形見だ。楕円型のロケットペンダントには、濃紺の丸石が蓋にはめ込まれている。古代秘宝(アーティファクト)と伝承されていたが、長いあいだ壊れたまま放置されてきた過去の遺物だった。

 それを、目覚めさせたのがルシアだった。古代の秘密を知るために、幼かったルシアが分解し組み立て直したことをきっかけに、ウルカヌスは永い眠りから目を覚ましたのだ。

 とはいっても、その全貌が明らかではなく、完全には直せていない。

 そのため、本来の姿はまだ取り戻せていないのだ。その声も、常人には届かない。ルシアと、人ならざるものだけが会話できる。

「ウルちゃんはそう言うけど、面倒でしかないわ」

 ルシアは唇を(どが)らす。

<旨いものを食って、良い音楽で踊り、男と遊べ>

「精霊のくせに生臭なこと言うのね。私はまだ婚約しています」
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