可愛げがないと捨てられた天才魔導具師は隣国でのんびり気ままな工房生活を送ることにしました!~念願の第二の人生、思う存分ものづくりライフ!~
「……すごい荒れている……。もう掘りつくしたって感じね。捨て石をあんなにしておいて、ボダ山が崩れたらどうするつもりかしら?」
ルシアは馬車から景色を見て思う。
木々もなく穴ぼこだらけになった山が、夕焼けを反射してあかね色に染まっている。
まるで、日に焼けすぎた肌のようで、痛々しい。
「このままでは、ジューレ侯爵家の資源も枯渇するのが目に見えているわね」
ジューレ侯爵は、宮廷の魔導具省長官だ。その地位は侯爵家の領地で、膨大な魔晶石が産出されるため得られたものだ。
魔導具の製造管理に関しては、ジューレ侯爵家を介してファクト子爵家が一手に引き受けてきていた。そのため、ジューレ侯爵家は魔導具の実務には疎い。鉱山で得た経済力と、社交力で魔導具省長官を務めているのだ。
逆に、歴代ファクト子爵家の当主は、魔導具マニアの変人で社交には一切興味がなかった。
ジューレ侯爵家のもとに仕えていれば、その一切を考えずにすむため、深く考えずに従ってきた。魔導具に対する知識はないが事務能力と社交に長けたジュール侯爵家と、魔導具以外には興味のないファクト子爵家は持ちつ持たれつの関係だったのだ。
ルシアの父も同じで、ジューレ侯爵家に言われるがまま、ローサとミゼルを引き取ったのだった。