【完結】養ってやるかぁ!!公園で出逢った無職男子が……まさかまさかの、そのまさか!?
まさか……の正体
ドアが蹴破られて、雪子を呼ぶ声が響いた。
「雪子さん!!」
「は、は、じめ……?」
震えて声がうまく出ないし、怖くて瞑った目が開かない。
雪子を押さえていた男達が、次々といなくなる。
多分、蹴り殴り飛ばされているのだ。
そして、抱き締められたのがわかった。
たった数日でも何度も何度も求めあった身体。
彼の匂い!
「遅くなって、すみません。怪我はありませんか?」
「……う、うぁああ、ああああん、ばか……ばか……」
「もう大丈夫、ごめん」
抱き締められ、やっと瞳が開いた。
目の前には、始の顔。
「おいいいいいいいい! なんだぁお前ぇ! 不法侵入者だ! 警察を呼べぇ!!」
馬鹿息子が汚い唾を吐きながら喚く。
「ふざけるな!! お前こそ、なんの権限でこのビルを使用している? この女性に対して一体何をしようとしていた――!?」
あたふたと喚く馬鹿息子が吹っ飛ぶような、威厳に満ちた怒声。
その後ろから更に老人男性の泣き叫ぶような声が聞こえた。
「こらぁ!! お、お前は何をしでかしてくれたんだぁ~~!!」
「パッ……パパ!?!?! な、なんでここに!?」
「すぐに土下座しなさい! そっから飛び降りてもいい! 首を吊れ! この御方に謝るんだ!! 命をかけて謝罪しろ!!」
「ひぁ!? どういう事!? なんでこんな若造に!?」
「おい、このビルを汚すような真似はさせるな」
始が静かに、そして重く告げる。
「は! はい! 申し訳ありません! 早く土下座しなさいっ! はやくぅうう!!」
「パパァ!?」
「こ、この御方は草神グループの御曹司である草神始様だ!! なんていうことをした! このバカ息子がぁ!!」
「……えっ……?」
くさかみ……?
信じられない言葉が雪子の耳に入った。
日本を支える財閥の……名前だ。
「我がグループが管理しているビルを私用で……しかも女性に対して、こんな仕打ちを……絶対に許さんぞ!!」
始の怒声のあまりの迫力に、馬鹿息子がひっくり返る。
「始くんが……? ど、どういう事……?」
ブランケットに包まれ、抱き上げられた。
始の身を心配したが、彼の後ろにはズラリと体格のいいサングラスの男達が並んでいる。
「樋口、後は任せた」
「はい、始様」
樋口と呼ばれた男が、震え上がる子会社社長と馬鹿息子に指示を出す。
二人とも土下座を始めた。
雪子の拘束を手伝った男達も、後手を縛られている。
ドアの外では先輩も捕まったのか、がっくりと座り込んでいた。
「雪子さん、行きましょう」
「え……どこへ」