【完結】養ってやるかぁ!!公園で出逢った無職男子が……まさかまさかの、そのまさか!?

面接


 始がいなくなった。

 ぼんやりしながら単発のバイトをする。
 コンビニのレジ打ち。
 隣の男がニヤニヤと近づいてくる。
 多分、30歳前後。
 
「ねぇ俺、君がタイプでさ。今度デートしない?」

「……私にとって貴方は全然タイプじゃないんで……」

 ハッと気づくと、男は真っ赤な顔をして睨んでいた。

「調子にのんなよ! せっかく声かけてやったのに!」

「はぁ? どっちがですか? なんで自分が気に入ってたら、相手も自分の事が気に入ってると思うんですか?」

 イラッとして言ってしまった。
 多分もうあのコンビニでは、働けないだろう。
 そして自分で言って、自分に返ってきた言葉。だと思う。

 ――自分が気に入ってるから、相手も気に入ってると思ってた――

 グサッと突き刺さる。

「はぁ……面接行こう」

 コンビニのバックヤードにある着替え室でスーツに着替えた。
 ストッキングが伝線してしまったけど、買う気力もない。

 もう帰っても、彼はいない。
 たった七日の夢。
 炊きあがったご飯と、冷たいおかずと冷たい味噌汁が待ってる……。

 またグサッと突き刺さる。

「……痛い……」

 雪子はふらふらと指定されたビルへと向かった。

「あれ……」

 玄関は真っ暗で、ビルは暗い。
 
「あ、雪子さん。こっちこっち~」

 先輩だ。
 先輩は暗いガラス張りの玄関の向こう側から現れて、手動で自動ドアを開ける。
 しかも片手には懐中電灯を持っている。
 電気が通っていないのか?

「えっ……?」

「あービックリしたよね? でも大丈夫。ただ、面接場所にしてるだけだから! 大手だから!」

「はぁ……」

 何度か飲みにも行ったし、可愛がってくれてた先輩の一人だ。
 だけど、クビになった時には助けてはくれなかった。
 しかし、それを後悔して今回の推薦話を持ちかけてくれたのだから、やっぱりいい先輩なのだろう。

 懐中電灯の光で、階段を上がる。
 人気はない。
 やっぱり廃墟ビルなんだろうか? と嫌な気持ちがじわじわと雪子の心に滲んでいく。
 
「あの、なんか試されてるんですかね? 事務員の仕事なんですよね?」

「大丈夫、大丈夫。此処の部屋だから、ここに面接官がいるから失礼のないようにね!!」

「いや、あの……先輩、私やっぱり今回の話ちょっと……」

「いいから! 入ってよ!」

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