オカルト屋へようこそ
口裂け女

怖い話が欲しい!

私、須波中学校2年4組雨宮日花|《あまみやにちか》。オカルト研究部所属。
オカルト研究部とは、学校でおこる様々な事件を調査して新聞にまとめる地味な部活だ。
私はそこの副部長をしている。
ちなみに部長は2年4組船山杞憂|《ふなやまきゆう》。
性格はクールであまり取り乱したりしない。
今は部活動中で、パソコンを使ってオカルト現象を調べているところ。
だけど…データが無さすぎる…!
そこで私は、友達から聞いた噂を杞憂にぶつけてみた。
「ねぇねぇ杞憂〜」
「なに?」
「オカルト屋って知ってる?」
「何それ」
『オカルト』という言葉にぴくりと反応を見せる杞憂。
「なんか友達から聞いたんだけどね。4時44分に1人で下校してるとオカルト屋って言って、怖い話を売ってくれる人が道に立ってるんだって。その人は紙芝居の台を持ってるの。そして、その買った話が現象でおこるんだって」
「ふーん…それで、その話を買った人はどーなったの?」
あれ、興味持ってくれてる。
「えーっと…よくわかんないや」
えへへっと頭に手を当てると、杞憂は途端に険しい顔になる。
「日花…まさか話買う気じゃないだろーな」
「え?買うけど」
「やめろ!」
ガタンっと立ち上がり、机を叩く。
「やめろ…オカルト屋には、近づくなよ。わかったな?」
「う、うん…」
こくりと頷き、私はまた調べ物に戻る。
それにしても…なんであんなに怒るのかな。
どうしたんだろ…?
首を傾げつつ検索サイトを開き、いつもと同じワードを検索した。
『妖怪 話 実話』『UMA 話 実話』『UFO 話 実話 写真』などなど。
今日も、収穫はなし、かぁ…。
そのうち下校時刻を知らせるチャイムが鳴り、慌てて部室を出た。

今は…4時44分だ。
独りだし…もしかしたら、居るの!?
ワクワクしながら帰り道を歩く。
あっ…!
黒髪ロングのお姉さんが紙芝居の台を持って立っている。
お姉さんは前髪が長くて、表情があまり見えないのがまたオカルト部の心をくすぐるなぁ…。
ちなみに服装は真っ白なワンピースに、薄ピンク色のハイヒール。
「あのー、すみません。これ、なんですか?」
「あぁ、いらっしゃい。これは紙芝居よ。怖い話は好き?」
「はい!大好きです!」
私がそう言うと、お姉さんはふふっと笑った。
「なら、怖い話買って行かないかしら?」
「怖い話、ですか?」
ちなみに、私がこのお姉さんのことを知らないフリをしているのは、初めての客にペラペラ情報を喋ってくれそうだから。
新たな情報がありますように…!
「そう。良ければ私が読み聞かせしたりもするの。どう?」
「うーん…種類を見せて貰うことは出来ますか?」
「いいわよ」
ニコッと笑ったお姉さん、髪の台の後ろから分厚い本を何冊か取り出して。
「この中にあるお話ならどれでも買うことができるわ。例えばこの本だったら…『雪女』とか『口裂け女』とか女性のお話がのってるわね」
口裂け女!?
それ、いいかも!
「すみません、口裂け女の話、買います!」
「あら、ありがとう」
「いくらですか?」
バッグを漁り、こっそり持ち歩いている小銭入れを取り出す。
「口裂け女は…200円になりまーす」
「これでお願いします」
「はい、200円丁度、お預かりしますね」
そしてお姉さんは私に絵本を渡すと紙芝居用の紙を台にセットした。
「良かったら、お話、聞いていかないかしら?」
「いいんですか?」
そう尋ねると、お姉さんはニコッと微笑む。
「ええもちろん。久しぶりの可愛いお客様だもの、サービスしちゃうわ」
そう言ってパチンとウィンクしてくるお姉さん。
お姉さんはすぅっと息を吸い込むと、ゆっくりと語り始めた__。
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