一匹狼の君は、どうしたら笑うんだろう?

プロローグ

 私、朝倉環(あさくらたまき)が高校二年生になってから数週間。
 幸いにも新しい友人にも恵まれ、青春をそれなりに謳歌する事ができていた。
 ……恋愛はまだまだ出来無さそうだけど。……これから頑張る所存。

 今まで誰かを好きになったことがない私だけれど、実は最近は気になる男子ができた。もちろん好きという訳ではなくて、あくまでも「気になる」だけ。ぶっちゃけ恋愛経験に乏しい私では判断がつかないのだ。
 
 それに、目で追ってしまう彼は――いわば問題児。
 本来なら私だって近寄りたくない相手なのである。
 
 不愛想な態度に、全てに噛みつくような威圧的な視線。
 髪色は明るめの茶色気味で、ピアスも左耳にばっちり。
 教師でさえ彼には手を焼いている様子。

 去年から噂は耳にしていたけれど、いざ同じクラスになると彼の存在感は凄まじい。言葉数は多くないから静かではあるのだが、その見た目のせいで時折クラスの雰囲気が固まるほどだ。
 もっと簡単に言えば……たぶんヤンキーってやつだ。

 まぁ、ヤンキーだとか不良の定義はわからないけど。

「――この問題わかる人~」

 現在、私が所属するクラスは数学の授業真っ最中。
 彼はといえば、ぼーっと窓際の席でうたた寝していた。
 やや気の抜けた表情が、なんだか気になってしまう。
 
 彼の名前は――須藤雄介(すどうゆうすけ)。問題児。不良。

 私が須藤雄介という男子を気になっているのには理由がある。
 ……友人にも言えず、かといって親に言うのは恥ずかしい理由が。
 正直、あれは幻だったのではないかと思う私もいる。

 あれは、進級前の春休み最終日のことだった――。
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