先輩!
「あ、久保さん」

「ほんとですね」


予定時刻から5分すぎて部屋を出ると、偶然エレベーターに向かう先輩に出くわした。先輩もこのフロアにいたらしい。

私たちに気付いた先輩が「おつかれ」と笑顔で声をかけてくれた。周りに人がいないし、いい機会だから穂乃果さんを先輩に紹介したい。

と思っていると、先輩の行動が早かった。


「インテリアの河合さんだよね。芽衣がお世話になってます。ありがとう。これからもよろしく」

「いえいえいえいえこちらこそ。わたしの芽衣ちゃんをよろしくお願いします」

「うん。でも俺のだけどね」

「マウント発言尊い。久保さん優勝」

「?」

「推します!」

「?」

営業スマイルの先輩が首をかしげた。先輩は穂乃果さんの言葉が理解出来ないんだと思うと、しばらく笑いが止まらなかった。

穂乃果さんが先に降りたエレベーター内で2人きりになると、先輩がなんの前触れもなくキスしてきた。

驚いて腰を抜かしそうになったわたしを余裕で抱きとめ。


「社内恋愛」


少年みたいな顔で、楽しそうに笑った。
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