先輩!
映画が始まるギリギリに映画館に入った。

薄暗い中ドリンクを手に、先輩がネット購入してくれていた席に並んで座った。

大きなスクリーンに夏公開の映画の予告が流れる中、先輩の大きな手が私の手に触れた。

わたしが先輩を見ると、先輩はスクリーンを真剣な顔で見ていた。


「俺じゃなくて映画見ろって」


指を絡め、わたしの膝の上に繋いだ手を乗せた先輩。スクリーンの光に照らされて、横顔が神々しかった。


映画が終盤になり、大号泣のわたし。

恥ずかしいから絶対泣くの我慢しようと思ってたのにこの有様。


バッグからハンカチを出そうと格闘していると、先輩が涙を指で拭ってくれた。

それから、エンディングが流れる中、エンドロールが終わり室内が明るくなるまで、肩を抱いてくれた。

それなのに。


映画館から一歩外に出た途端。「泣きすぎだろ。干からびるから何か飲めよ」と大笑い。

イジワル!

さっきまでの激甘先輩はどこですか?
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