先輩!
「胸がいっぱいでお昼が食べれません」

「いや、食ってるやんハンバーグ」

「えへ。先輩のドリアも美味しそうですね」

「食う?」

映画の余韻が色濃く残る中、遅めのランチは二人の希望が一致して洋食屋さんにした。

向かいに座る先輩が、シーフードドリアをひとすくいして、こちらにスプーンを差し出した。


「こ、これはまさか『あーん』というやつですか」

「なんでもいいから食えよ。ほら」

えい、と気持ちに勢いをつけてぱくんと一口。

「美味しいです」

「俺のほうこそごちそうさまだわ。俺の彼女かわいすぎ。俺、自分がこんなことする人間だとは思わなかった。ハズい」


わたしのほうこそ。照れ顔の先輩はなかなかレアなのでごちそうさまです。
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