先輩!
「怪しいものじゃないです。受け取ってください。芽衣ヒツジです」

「芽衣?さっきのヒツジ?ライトグレーの?ふわふわな?」

「はい。あの色合いだったら、先輩の家のブラックレザーのソファーにも合いますよね。まくらとお値段全然違いますけど、ありがとうの気持ちです」

「やば、嬉しすぎる。サンキュ」

「抱きしめてくださいね。ちょ、ちょっと、今わたしをじゃないです、せんぱい」

「あ、間違えた」

「もう、わざとなくせに」


一瞬の早業でわたしの腕を掴み抱き寄せようとした先輩を、なんとかぎりぎりでかわした。

本当は抱きしめられたいけど、こんなところじゃダメです。先輩。


「大事にする」

「はい。可愛がってくださいね」

「やべえ、今すぐ可愛がりてえな」

「こんな所でぬいぐるみ触るのはちょっと、」

「ちげえよ。お前だよ。芽衣本人」


わー!もう、先輩の甘い口撃に蕩けそう。

次行きましょ。と一歩歩き出した瞬間感じた、ひと月に一度のあの感覚。そう言えば、ほんの少しだけ下腹部に違和感がある気がする。

予定はまだ1週間先なのに。

先輩に一言断りを入れてから、慌ててお手洗いに駆け込んだ。
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