先輩!
「今日帰りちょっと遅くなるからYシャツをクリーニングに取りに行ってくれない?で、先俺んち帰っといて。カギ持ってる?」


長身の先輩が隣に立って、わたしに話しかける。仕事中のキリッと引き締まった顔ではなく、2人でいる時の、柔らかい笑顔で。


え、え、先輩?考えろ。なんて答えるか。


「うんわかった。いつものあそこのクリーニングだよね。大丈夫カギ持ってる」

「こないだのアレ作ってよ。今日の晩飯」

「うん」


今日は食事に行って、そのあと先輩の家に泊まる。そういう約束だった。


クリーニングってどこですか?先輩の家の鍵なんて持ってませんよ?まだ先輩にご飯作ったことないですよ?

先輩、わたしの返事間違ってませんよね。


3人にわざと聞かせたことは明白で、悟られないようににこにこと笑顔を作る。引きつってないかな。驚いて固まっている3人に、先輩が言った。

「このこと上に報告するから。万が一、次があったら許さない」

見たことがない冷酷な表情に、聞いたことない冷たい声だった。
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