先輩!
コンコンコン。ドアをノックし先輩が待つミーティングルームに入った。

机に座って、長い脚をクロスさせて「カギ閉めておいで」と両手を広げる先輩。

「先輩!」

言われるがままにドアのカギをロックをして、無心で先輩に抱きついた。勢いがつきすぎて、先輩が私の腰に腕を回したまま一緒によろけて笑う。もうそれだけで胸が熱くなる。


「先輩知ってたんですか?総務の人たちのこと。部長も野口さんも」

「ああ、メンターの河合さんの報告書にあったし、つい先日自販機コーナーで河合さんに会ったときもくぎ刺された。すごい剣幕で『守ってくださいよ!わたしの芽衣ちゃん!』って。俺のだって言ってんのに」


先輩が穂乃果さんの真似をして裏声で話すからおかしくて笑ってしまう。


「直接危害を加えられてるわけではないし、上司の対応としては見守ろうって話だったんだ。当然総務部にも伝わってるし。それなのに目の前で芽衣囲まれてんじゃん。焦ったわ」

「すみません」

「いや、芽衣一切悪くないから。完全なやっかみ。女って怖え」

よしよしと頭を撫でてくれる先輩。先輩に回す腕にギュと力を込める。
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