先輩!
無限の名刺交換と思われていた作業が一段落し、早瀬さんと話をしていた時だった。早瀬さんの顔色が良くない気がする。

「大丈夫ですか?」

「実はちょっと立ってるのが辛くて。奥の応接室で休ませてもらおうかな。もうお開きだから頑張れるかなと思ったんですけど」

「わたしも行きます」

早瀬さんに寄り添い、窓口カウンター横の出入り口から入り応接間に連れ添って入った。

真新しいダークブラウンのレザーソファーに腰を下ろした早瀬さんが、ふう、とお腹をさする。


「大丈夫ですか?」

早瀬さんの隣にしゃがみ、様子をうかがう。


「最近お腹の張りがひどくて」

「そうなんですね」

早瀬さんはもうすぐ産休に入ると先日聞いた。この仕事が産休前の最後の大仕事だと、2人で気合を入れて取り組んできたのだ。

何か気分転換に。と話題を探してみる。


「今日ご主人も来られてましたね」

「ええ、お恥ずかしい」

「お二人の馴れ初めお聞きしてもいいですか?とってもお似合いで、ずっと聞きたいなって思ってたんです」

「えー恥ずかしい」

早瀬さんが大きなお腹を両手で撫でる。
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