先輩!
「あのさ、」

先輩が切り出したのは、デザートを食べ終わり、エスプレッソ寄りのコーヒーを飲んでいた時だった。

「実は俺、また出世した」

「え!すごいです!さすが先輩!」

「ん、」

「もーいつから知ってたんですか?すぐ教えてくださいよ」

「佐々木男が異動情報ぶっこんで来た時、野口さんからのLIMEで知った」

「そうなんですね。次は課長ですか?」

「そうらしい」

「お祝いの乾杯したかったです。また今度、正式な辞令が出たらお祝いさせてくださいね」

「いいってそんなの」


そしてまた、「あのさ、」となにか言い出しにくそうな、そんな雰囲気を纏った先輩。

コーヒーカップの持ち手を持っていた私の手を、先輩が外す。

先輩の指がそのまま私の指を絡めとり、指先に熱が伝わる。


「俺、営業部にくるまで、特にやる気も目標もなくなくだらだら仕事してたんだよ」

以前野口さんから聞いたあの話だろうか。先輩は何でもできちゃうからってやつ。

なにかを話そうとしてくれている先輩に、相づちをうちながら次の言葉を待つ。
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