先輩!
話をしていただいた警察官に「家族は近くにいるか。連絡取れるか」と聞かれ、県内在住ですが遠方なので恋人に連絡しますと伝え、震える手で先輩に電話をかけた。

車を飛ばして駆けつけてくれた先輩の姿が見えた瞬間、嘘みたいに恐怖が消えた。先輩は至って冷静だった。

警察官に名刺を渡し、恋人ですと告げ状況説明を求めた。


彼女を狙ったかどうかも不明なんですね。しばらく自分の家に泊めます。巡回お願いします。何かあれば俺でもいいので必ず連絡ください。

動揺して話どころではないわたしの代わりに話をしてくれた。


警察の人と先輩に付き添ってもらって部屋に入り、数日間の生活に必要なものや服などをキャリーに詰め込んだ。

穂乃果さんと作り上げたお気に入りの部屋の電気を消し鍵を閉めたそのとき、どうしてこんなことに。と強い悲しみがこみ上げた。
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