先輩!
と、膝の上のカバンの中でプライベートのスマホがメッセージを受信した。
「先輩!野口さんに今夜ご飯誘われました。ついに彼女と別れたんですかね」
「ばーか」
「だって初めて誘われたんですよ!どうしよう。一回家帰って着替えてこようかな。先輩、このままうち寄ってもらっていいですか?せめて勝負下着に」
「佐々木さあ、降ろされたい?」
「ごめんなさい。冗談です。仕事中です」
「ちなみに佐々木はどんなので勝負すんの?」
「すみません、勝負とは無縁の日々なので買わなきゃです。でもすごいですね。先輩みたいなかっこいい人が言うと、全くセクハラに感じませんね」
「そりゃどうも。で?俺と飯行くとき、勝負の備えが必要だと思ったことあったか?」
「一度もありません」
「言い切るなよ。先輩には気を使ったほうがいいって教えてもらっただろ」
「はい。久保翔先輩に教わりました。でも先輩に今更気遣いなんて、イタッ!暴力!」
メッセージを開き、スマホの画面を見せつけ喜ぶわたしに、先輩が右手はハンドルを握ったまま、もう片方の手で頭をチョップされた。ひどい。