先輩!
「さ。芽衣ちゃんデザート行こ」

「すみませんデザートとドリンクお願いします」と近くを通りかかった店員に告げ、グラスに半分ほど残っていた水を飲み干した。

もう、のどがカラカラ。


「すぐ返事しなきゃだね」

穂乃果さんの笑顔に添えられた一言。わたしは苦笑いしながら、無意識にゴクンと呼吸を飲み込んだ。私の覚悟の表れかもしれない。先輩とお付き合いしたい"けれど"と、私をなやませた理由。


「でもその前に、ちゃんとしなきゃいけないから」

ほんのわずかに「ん?」と眉をひそめ、すぐ何かに気付いた穂乃果さんが若干語気を強める。


「ああ…ズブズブセフレな元カレね」

「違います。そんなのじゃないです。去年の夏に別れてから、会ったのは数回だし」

「違わない」

「穂乃果さん…」

わたしと穂乃果さんが親しくなったきっかけはこれだった。

面談中に穂乃果さんに打ち明けたのだ。

中学2年生の時から8年間付き合った恋人と別れ、同棲を始めたばかりの部屋を出なきゃいけなくなって困っていますと。


辛いですと、つい、こらえきれず涙してしまったのだ。
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