先輩!
「褒め過ぎな。ほんとに大したことないから」
「いえ、すごいです。今日教えていただいて、とても分かりやすかったです。ありがとうございます」
会社のエントランスで深々と頭を下げられ慌てる。
「あ、例のスーツ屋今日行ってみる?」
照れくさくて話題を変えた。
退社前に、佐々木のスーツについて部の意見がまとまったので本人に伝えたばかりだ。
「あの、そのことなんですけど、」
言いにくそうに切り出した佐々木。
「どした?」
「先輩みたいな素敵な男性と仕事以外で2人きりでいるのは・・・」
「彼氏がいるから困る?」
「はい・・・あの、すみません、なんて言ったらいいかはっきりと言葉でお伝えできないんですけど、困るというか、彼に悪いなって」
心底申し訳なさそうに伏せた視線。整った長いまつ毛が、瞳に影を落とす。