先輩!
「そっか。何も考えず誘って悪かったな。気にすんな。言いにくかったろ」
「いえ、あの、会社の上司の方が気を使って誘ってくださったのにこんなこと。本当にすみません」
「気にすんなって。二人がまずいんだったら野口さんと3人だったら?男が増えるからもっとまずいか」
「いえ、そうしていただけると。本当にすみません」
「何回謝ってんだよ」
やっぱり彼氏いたか。
しかも男と2人はって、どんだけ彼氏幸せ者だよ。こんなくっそ可愛い子にそんな想われて。
ああ、面白くねえな。
「佐々木電車だっけ。俺こっちだから」
「はい。お疲れ様です。明日もよろしくお願いします」
「おつかれ。気をつけて帰れよ」
くそ。
佐々木と別れ、1人家に向かって歩きながら、目についた小石を蹴り飛ばす。
くそ、面白くねえ。面白くねえ。
無意識に、右手がタバコを求めポケット内を探っていた。
あの日、タバコをやめようと思って以来、初めてのことだった。