先輩!
ホテルの一階にいたのだが、ひとまず外に出た。
ちょうど大通りから一本入ったところにベンチがあったので、そこに並んで腰掛けるよう促した。
「ほんとすみません」
「落ち着いたか?」
「はい、」
大きな瞳はまだ涙で濡れている。
女性の涙がキレイだと、初めて思った。
俺が今まで見てきたそれとは何もかも違って見えた。
肩を抱いて慰めてやりたいが、それをするとセクハラに該当する。
くそ、なんで俺は佐々木の上司なんだ。
泣いてる佐々木を慰めたいだけなのに、それもできないのかよ。
「実は・・・最近彼氏と別れたんです」
「は?」
「振られたんです。それで、横山さんと話してたらいろいろ思い出してしまって、すみません」
「そうか・・・」
気が利いた言葉が何一つ出てこない。
目の前で涙する佐々木が可哀想だ。
でも、彼氏と別れたと聞いて喜んでいる自分がいる。
俺ってこんな最低な男だったのか。