先輩!
「話が逸れたが、久保には佐々木の指導を外れてもらう」


芽衣のOJTは終了している。なのでこの佐々木は虎太郎のことだ。

「・・・わかりました」

「早瀬コーポレーションから正式に連絡が来た。早瀬本体はもちろん、県内外のグループ企業や関連会社の受注をいただけることになった」

「嬉しいですね。すご、早瀬か」

「でももちろん濃い付き合いの取引先があるところは別だし、厳しい条件を提示されるところもあるだろう」

「はい」

「早瀬関連を久保に一任する。久保はとにかく現場を走り回ってくれ。事務補佐に誰かつける。だから指導から外れてもらう」

「わかりました。大役ですね」

「そうだな。でもお前がとった契約だからな」

「でもきっかけは間違いなく佐々木です」

「ふたば銀行リニューアル披露の場で副社長に猛アプローチかけたのは久保だろう?多忙の副社長に週明けてすぐアポねじ込んで」


あの場で、俺はある作戦を立てていた。芽衣には「わたしが担当しました」と名刺をばらまかせた。

俺は、人の顔と名前を覚えるのが得意な芽衣から、あの人が誰々ですと情報をもらい、早瀬やGGなど、県内有数の大手企業相手に大口を狙う。

そしてふたば銀行との更なる深耕取引に狙いを定めていた。


それらに、限られた時間の中でも、より多くの時間を割いたのだ。
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