先輩!
芽衣が早瀬副社長の奥さんである、ふたば銀行の担当者と仲良くなり、あの場で体調を崩した奥さんを介抱したことで、副社長も俺のアプローチを袖にできなかったのではないかと思っている。


もちろんそんな義理人情論は時代にそぐわないし、あれだけの大企業のトップの人間が、そんなことで動くとも思っていない。


バタバタと奥さんを連れて帰ってしまったので、週が開けた月曜日の朝一で副社長宛に電話をかけ、昼ならと言われ副社長室に出向いた。

それから何度も何度も通い、先日口頭で契約したいと言って貰えた。


「県外の出張も多くなるだろうけど頼んだぞ」

「はい」


ミーティングルームから出ると、芽衣の姿はなかった。もう既に外回りに出たんだろう。


同じ部署とはいえ、指導を外れたらこんなもんだ。


今夜うちに泊まらないかな。


芽衣の顔をずっと眺めていたい。

一緒に飯食って、風呂入って、触れて愛して。


ずっと腕に抱いて眠りたい。


そんなことを思いながら、部下たちからの報告書に目を通した。
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