先輩!
俺自身は、改まってカッコつけたプロポーズよりも、そういう自然に口をついてでたほうがいいなとぼんやり思う。
ただ、芽衣はどうだろう。
「でも俺がお前くらいかっこよかったら、ベタなプロポーズがしたかったかなあ。抱えきれないくらい大きなバラの花束を渡して、跪いて箱パカ」
「芽衣って結構記念日とか気にしてるんで、やっぱりロマンチックなの憧れてんのかなって。でも花なんか買ったことないっすよ。サプライズなんかしたことないし、もちろん指輪も。そんな店にすら入ったことない」
「でも嫁がな、後になって俺がそんなキャラじゃないことはわかってるけど、ロマンチックなプロポーズされたかったなって言ってて、そうなんかい!ってなった」
「やっぱりそういうものなんですかね」
「というか、お前さっきからずっと芽衣って言ってるの気づいてる?いつも佐々木って呼んでるのに。愛しそうに呼ぶんじゃねーよ。こっちが照れるわ」
この会話の3日後。
野口さんの挙式と披露宴に参列し、芽衣も合流した二次会にも参加して、結婚願望に拍車がかかった。
自分の中で、ぼんやりしていた想いが、より鮮明にクリアになった。
やっぱり、芽衣が喜ぶプロポーズをしたい。
そんな時、あの不審者事件が起きたのだった。