先輩!
「明日だけど、」

「課長出張っすよね。芽衣を無事家まで送っていくんでご安心ください」

「いつも悪いな。助かる」

「いえ。課長に頼ってもらえて嬉しいんで」


こいつ、可愛いんだよな。

俺にバカみたいに懐いて、好きだの尊敬してますだの、恥ずかしげもなく口にして。

営業部に来てからずっとこの調子で、いい加減俺もほだされたか。


口調は軽いけど、礼儀正しいし、こいつの中で上下関係は絶対らしい。


「芽衣バカ可愛いけど、お前変な気おこすなよ」

「絶対ないです。課長の恋人に手はだしません」

「ん、めちゃくちゃ大事な恋人だから」

「あー芽衣がうらやましい」


うん。おかしいおかしい。


「お前のこと信頼してるからな」

「はい!」


嘘じゃない。ノリは軽いけど、仕事はちゃんとするし、芽衣とは同期としていい関係を築いている。

2人を見ていたらわかる。それに、2人の契約獲得の数字にも表れている。


来期も異動がなければこのまま2人をペアで行動させたいと部長が(うな)るほどだ。
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