先輩!
「でももう犯人捕まらないんすかね」

「時々夜行ったり警察に問い合わせてるけどさっぱり」

「芽衣と行ってるんですか?事件があったマンションに」

「いや基本一人。でも芽衣と荷物を取りに行った時、泊まろうとしたこともあるんだけど、ちょっとした物音にもビクビク怯えて怖いって半泣き」

「マジすか。まあトラウマっすよね」


もうあのマンション引き払えばいいのに。俺のマンションに完全に移ってきたらいいのに、芽衣は最近物件を探している。

正月実家に帰ってからだから、きっと両親に何か言われたんだろう。


最低週に一度は芽衣のお母さんに電話をかけ、近況を報告している。

いつも丁寧にお詫びと感謝を述べられる。

俺は決まって「ちっとも迷惑ではない。俺も芽衣さんといるほうが安心するから、ずっといてくれて構わない」と伝えるのだが、芽衣と同じで、お母さんも察してくれない。


かっこよくプロポーズしたいという思いはあっても、具体的には何も決まらず、思いは募る一方だ。

明日で付き合って11ヶ月。


夜出張から帰って、気持ちだけは伝えたい。


花束くらいは用意したほうがいいか。


芽衣はもちろん受け入れてくれるよな。


喜んでくれる?


あいつすぐ泣くから、嬉し泣きしてくれたら最高なんだけど。

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