先輩!
*
夕暮れの日本の古都をタクシーの中からぼんやり眺めながら。
観光客慣れしたよく話す高齢の運転手が、駅に向かいながら、あれがなにで、と聞いてもないのに教えてくれて、興味もあったので素直に聞いていた。
今度は仕事じゃなくて芽衣と旅行で来たい。
「綺麗ですね。夜もいいっすね」
「でしょう。紅葉も最高ですよ。お客さん今日は仕事でしょう?次はぜひ恋人か奥さんと観光で来てくださいよ」
「そうですね」
「新幹線乗り場に近いところで止まりましょうか」
「はいお願いします」
赤信号で停車したとき、やっと会話が途切れた。もう駅も近い。
『そうだ。芽衣に連絡しよう』
ポケットからプライベートのスマホを取り出した瞬間、手からスマホが滑り落ちた。
あの日芽衣がくれた大事なスマホケースだ。
運悪く助手席の下に入り込んでしまい、すげえ汚れそうで慌てて拾おうと手を伸ばした。
でも全く取れる気配がなくて、スーツが汚れるのを覚悟して、後部座席と助手席の間の空間にしゃがみこんで左手を伸ばした。
その時だった。
何かが頭上で爆発したような大きな音。鼓膜がビリビリと震える。凄まじい衝撃と体が押し潰されそうな圧迫、全身の激しい痛み。
何が起こったのかわからなかった。
夕暮れの日本の古都をタクシーの中からぼんやり眺めながら。
観光客慣れしたよく話す高齢の運転手が、駅に向かいながら、あれがなにで、と聞いてもないのに教えてくれて、興味もあったので素直に聞いていた。
今度は仕事じゃなくて芽衣と旅行で来たい。
「綺麗ですね。夜もいいっすね」
「でしょう。紅葉も最高ですよ。お客さん今日は仕事でしょう?次はぜひ恋人か奥さんと観光で来てくださいよ」
「そうですね」
「新幹線乗り場に近いところで止まりましょうか」
「はいお願いします」
赤信号で停車したとき、やっと会話が途切れた。もう駅も近い。
『そうだ。芽衣に連絡しよう』
ポケットからプライベートのスマホを取り出した瞬間、手からスマホが滑り落ちた。
あの日芽衣がくれた大事なスマホケースだ。
運悪く助手席の下に入り込んでしまい、すげえ汚れそうで慌てて拾おうと手を伸ばした。
でも全く取れる気配がなくて、スーツが汚れるのを覚悟して、後部座席と助手席の間の空間にしゃがみこんで左手を伸ばした。
その時だった。
何かが頭上で爆発したような大きな音。鼓膜がビリビリと震える。凄まじい衝撃と体が押し潰されそうな圧迫、全身の激しい痛み。
何が起こったのかわからなかった。