先輩!
救急隊員に、ぐちゃぐちゃに潰れたタクシーから助け出されている時意識を取り戻したものの、それでもまだ何が起きたのかしばらく理解出来なかった。
あのおしゃべりな運転手は無事だったのだろうか。
生まれて初めて救急車の世話になった。
顔面が痛くて、特に左側は視界が暗くほとんど見えない。その上、しばらく頭も痛いしぼーっとしてるしで喋れない状態が続いた。
口の中がずっと血の味がしていた。唾を吐いたら予想通りだった。
全身が激痛だったが、特に左腕が痺れていて、痛くてたまらなかった。
警察か救急隊員かが俺の免許証で氏名等を確認し、スマホの着歴の1番上にあった会社に電話をかけ、事情を説明し、上司が今駆けつけていると聞かされた。
芽衣は心配して泣いてないかな。それとも何も知らずに俺の帰りを待ってるのかな。
今日帰れそうにないや。ごめんな。
心配いらないと連絡したかったが、病院につくなり、次から次へと検査に回され連絡が出来なかった。
やっと検査と処置が終わり、ストレッチャーに乗せられ連れて行かれた部屋で、芽衣の後ろ姿を見た瞬間泣きそうになって、必死に、必死に堪えた。
生きててよかった。