先輩!
今夜は心配かけたから、ゆっくり休んで欲しくてホテルに行かせたのに。

と思いながらも、芽衣がいてくれて喜んでいる自分がいる。

ソファーベッドがあるからそっちに寝ればいいのに、わざわざこんなところで。


「あれ?先輩目が覚めた?痛い?」


不意に目を覚ました芽衣が、そのままの体勢でグイ、と俺の顔のちかくに寄ってきた。


「ん、大丈夫。なに戻ってきてんだよ」

「明日目が覚めたら来てって言われたから来ちゃった」

「来ちゃったって、かわいいかよ」

「翔くんのそばにいたくて。だめ?」

「・・・全然だめじゃないです。いてください」


クソ。こんなん負けるに決まってる。可愛すぎるんだよ。嬉しすぎるんだよ。


「あ、コンビニでいろいろ買ってきたんですけど」

起き上がった芽衣が、ソファーベッドに置いてあった大きめな紙袋を持って帰ってきた。


「スマホの充電器と、替えの下着と、何か口に入れられるかなと思ってゼリー飲料と、歯ブラシと、他に何かいるものありますか?このくらいしか浮かばなくて」

「ありがとう。十分だから、頼むから休めよ」


芽衣は来た時のままのスーツ姿だ。薄暗くてよく見えないが、シャワーは浴びたように見える。

大きな目は充血していて、疲れが見える。
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