先輩!
「課長の私服ガチかっけーっす。どこのブランドですかそのコーt」

「お前この時間は外回れよサボんな」

「久保ー、こいつは領収書整理命令中」

「お疲れ様です野口さん。またかよお前、」

「今日はすみません」と近づいてきてくれた野口さんに挨拶をした。


「虎太郎後でこれみんなに配っといて」とさっき買った手土産を渡す。

男ばかりの営業部は、実は俺以外みんな甘党だ。


「芽衣は?」

「久保、そのことであっちいいか?お前に電話しようと思ってたんだ」


一人一人に声を掛けながら、野口さんに付いてミーティングルームに入った。

すぐ部長も合流したが、2人に共通して張り詰めた空気を感じた。


芽衣に何かあったのかと、心配で仕方ない。


「警察から連絡があってな。あの時の不審者が捕まったらしい」

「ほんとですか!」

「今応接で警察と、」


コンコンコン、ノック音がしたので部長が口を(つぐ)んだ。このことは1部の人間にしか知らせていないからだ。


「失礼します」とドアから顔を出したのは芽衣で、俺と目が合いニコリと微笑んだからホッと胸をなでおろした。

< 338 / 371 >

この作品をシェア

pagetop