先輩!


人の顔を覚えることに長けている芽衣でさえ、一切見覚えがないらしい。


「今日はひとまず犯人逮捕の報告だけで、今後の対応についてはまた後日だそうです。この度は、私事わたくしごとでご迷惑をお掛けしてすみませんでした」


芽衣がみんなに深々と頭を下げ、俺も「ひとまず安心です」と頭を下げた。


「これで気持ちよく入籍できるな」

「「はい」」


部長と野口さんが「おめでとう」と祝ってくれた。


部屋を出て、芽衣が帰宅準備をする間ずっと「歴史的瞬間に立ち会います!」とうるさい虎太郎を。


「こた邪魔しないで」

芽衣が一蹴したので腹を抱えて笑った。


「今度うちで飲むか。つまみも作ってやるよ」

「マジすか!!ついに家入れるんすか?え、課長の手料理っすか」

「先輩のお料理ほんとに美味しいよ」

「やべ、嬉しすぎて泣きそう」


本当に泣き出しそうだったので、また笑った。
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