先輩!
「翔くんまだ時間いい?写真撮りたい」

「ん、」

「口紅付いちゃったね」

「なあ、このままベッド行こ」

「だーめ」


芽衣がテーブルの上のティッシュを1枚抜き取り、唇に付いた色を拭き取ってくれた。

バッグからポーチを出して口紅を塗り直し、置いていた婚姻届を手に取った。


「これ持って撮りたい」

「ん、」


ソファーに座って、テーブルの上に芽衣のスマホをセットして、セルフタイマーで写真を撮った。

2人で婚姻届を持って。


芽衣を膝に乗せて、後ろから抱きしめたバージョンや、他にも恥ずかしいのを何枚か撮って満足だ。

人に見られないようにしよう。



「そろそろ出るか」

再び唇に付着した色を拭いながら言うと、3分待ってと返事が返ってきた。


芽衣はノーマルバージョンの写真を両家に。

個人情報を加工で消したものを友人に送っていた。



車を走らせまず向かった先で、結婚記念に一生モノのペアの腕時計を購入した。

何度か実物を見て、何にするか決めていたので早かった。


ドライブデートを兼ねて次に向かったは、三ツ星の和食レストランだ。


ライトアップされた庭園が見える、広々とした和室で、ゆっくり食事を楽しんだ後、役所に婚姻届を提出する予定だ。
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