先輩!




締めくくりの水菓子フルーツを食べたあと、トイレに行くふりをして部屋を出た。会計を済ませ、預かってもらっていた花束を受け取った。

花束を両手に持って部屋の襖の前に立ち、ふう、と小さく息を吐いた。


部屋に戻った俺を見た芽衣は、口を両手で覆い、大きな目を丸くして、固まった。


目を潤ませる芽衣のそばで跪き、2度目のプロポーズだ。



「芽衣。永遠の愛を誓います。俺と結婚してください」


両手いっぱいの大きな花束を受け取った芽衣が必死に涙をこらえている。瞬きをしたら大粒の涙がこぼれそうだ。

そんな芽衣を見て、俺の胸に熱いものが込み上げてくる。


1年間でもらった愛を、俺はもらった以上にあげられているかな。

そして事故では命を救われ、1ヶ月間、どれだけ寄り添い助けて貰ったか。


「俺のかっこ悪いところも全部、愛して欲しい」

「翔くんとお付き合いしてから、毎日が本当に幸せです。毎日が記念日です。ずっと愛してます」


声を震わせる芽衣を花束ごと抱きしめた。


真っ赤なバラは芽衣のイメージじゃない。プロポーズと言えば。なんだろうけど、芽衣に似合う花束にした。


ピンクや黄色メインの淡いカラーの花とたっぷりのかすみ草。濃い色はアクセント程度だ。


隣に腰を下ろすとすぐ腕を組んで身体を擦り寄せてきた。
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