先輩!




「芽衣...」

「...翔くん」


ベッドで抱き合って、軽く唇を重ねる。

事故後、昨日までずっとここでやめていた。


外傷は腕の骨折だけだったが、全身むち打ちで頭も打っていたから、体を動かすことはストップがかかっていた。

あれから予報よりも正確に、天気が崩れる前になったら頭痛と、酷い時は吐き気に襲われる。


この症状は、そのうち消えるかもしれないし、一生続くかもしれないと言われた。


今日やっと、今まで通りの生活を送る許可が降りた。


「死を覚悟したとき、芽衣を想ったのと、芽衣との子どもが欲しいと思った」

「うん」

「芽衣はどう思う?しばらくは2人でいたい?」

「2人でいたい気持ちはあるけど、わたしも翔くんの子どもが欲しいな。パパになった翔くんも楽しみ」

「俺?」

「うん。会社の上司の"先輩"も大好きで、恋人の翔くんはもっともっと大好きになったから、旦那さんでパパの翔くんに早く会いたい」

「じゃあ、着けずにするよ?」

「うん」


芽衣の真っ直ぐな瞳に迷いはなくて。


その瞳に吸い込まれるように頬を擦り寄せ、先ほどまでとは全く異なるキスをして、久しぶりに素肌に触れた。
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