先輩!
今日は推しの生配信ライブがある。

明日の正午までアーカイブも見れる。

帰りに商店街の肉屋で手羽先買って、缶ビール片手に楽しも。


待ちに待った金曜日。アフターファイブのイベントで頭がいっぱいだったわたし。


仕事を終え、インテリア部の同僚数人と退社していたその時、1階のロビーを足早に駆ける一群が目に入った。

「あ!芽衣ちゃん」

いつもの感じで手を振ると、私に気付いた芽衣ちゃんが立ち止まり、今にも泣き出しそうな顔をしたので慌てて駆け寄った。


「芽衣ちゃんどうしたの?」

最強塩顔、芽衣ちゃんの同期の佐々木くんが、その場に崩れ落ちそうになった芽衣ちゃんをとっさに抱き止た。

その1歩2歩先には、営業部長と、芽衣ちゃんの元推しの野口さんがいる。


4人の顔を見れば誰だってわかる。なにか大変なことが起きていることが。


芽衣ちゃんの大きな目に、みるみる涙が溜まっていく。


「穂乃果さん先輩が...」

「芽衣!泣くのは嬉し涙まで我慢しろ!絶対泣くな!!」


真っ赤な目をして大声で怒鳴った佐々木くんに、ロビーにいた全員が驚き振り返った。

目の前で目撃したわたしは、その迫力に圧倒された。


久保さんに何かあった?

わたしの大好きな芽衣ちゃんが、立っていられないほどの何かが。
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