先輩!
「この顔詐欺ってるよ。メイクで5割増だし、見てこれ。絆創膏を細く切って二重補強してる。右目だけ。こっちの二重が定まらなくて」

ほら見て。と目を閉じ顔を近づけてきた。

おいおいマジか。キスするよ?


「あ、ほんとっすね。テープ貼ってある」

「でしょ。わたしの秘密」


欲求は抑えやり過ごした。はずだった。

ほろ酔いの年上美人が、俺を見つめてくる。


「はあ、尊っ、」

そして頬に両手を添えられ、ため息混じりに吐かれた一言。


俺、誘われてる?

どうすりゃいいの。


この後、このエロい空気を元に戻そうとしてとった行動が、さらに悪化させてしまった。


「テープ取ったらどうなんの?」

取る気はないけど手を伸ばした。予想通り穂乃果さんが「やめてよ」と笑うまではよかった。

穂乃果さんが俺の手を掴んだまま、体ごと逃れようとして、ワインのボトルを倒しそうになったから、とっさに抱き止めた。


女性らしい細くて小さな身体。

艶やかな髪の毛がさらさらで、深夜だというのにいい香りがした。

若干酒の匂いもして、相乗効果で俺の理性を揺さぶってくる。


穂乃果さんを抱き寄せ、ぎゅ、と力を込めても抵抗されなかった。
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