先輩!
「ごめん虎太郎、やっぱりそのワイン1口ちょうだい」

穂乃果が赤ワインが入ったグラスに手を伸ばす。「いいよ」と差し出し、受け取ったかと思うと、ぐいと一気に飲み干した。


「あー!シラフで素直になるって勇気いる!先週末誘われなかったから、遊ばれちゃったかもって不安になってた」

「そもそも芽衣の世話になってる先輩に、遊びで手出すわけねえよ。俺そんなクズじゃねえし。推し活が忙しいって言ってたから遠慮したんだよ。俺好きって言ったじゃん。どうして不安になるんだよ」

「だって。付き合おうって言われなかった」

「言うもんなの?お互いが好きって言ったらわざわざ言う必要なくない?この歳にもなって」

「この歳だからこそ必要なの。気持ちがなくても身体を重ねられる大人だから」


ああ、うん確かに。それは一理ある。

妙に納得しながら、穂乃果にドリンクのメニュー表を渡す。


「ありがと。やっぱ飲む」

「おー飲め飲め」

「虎太郎、さっきから穂乃果って呼び捨てだし、敬語もやめたね?」

「だって彼女だし。何飲むか決めた?」

「ピーチウーロン」

「そんな可愛いの飲むの?」

「だってこの前酔っててすっごい大胆なこと言ったし、した。思い出したら羞恥で死ねる。だから今日はお酒控えたの」

「あれが穂乃果の通常かと思った。どエロいなこの人って」

「いやー!」


穂乃果がメニューで顔を隠すから奪い取ってやった。
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